川崎フォトエッセイ  その866  煮詰まる       HOME

 建造物は、年月を重ねることによって煮詰まっていく。それが今の姿であり、建造当時の姿は過去のものとなる。

 町も環境によって煮込まれる。程良く煮詰まったあたりで、新しく建て直されたり、改築や改装が施されることになる。しかし、そのものが機能している間は、そのままでも不便は感じないだろう。

 煮詰まったものは、最初のころのイメージと異なった形相になる。それを味わい深いと見るかどうかは感じ方の問題だろう。

 そして感じ方は、一個人でも一定ではない。感じ方ほど安定しないものはないが、感じ方ほど人の動きを導くものはない。

 些細なことを気にし、コストパフォーマンスの低い行為をやることもある。

 僕らは何かにくたびれたとき、煮詰まってしまったものから抜け出したいと考えることもある。

 そして新しくやり始めたことも、いずれは煮詰まるのかと思うと、動くのが億劫になる。