川崎フォトエッセイ  その984  何もない       HOME

 街中で暮らしていて、たまに山の中に入ると、何もない場所のように感じてしまう。実際には膨大な数の植物が生い茂っているはずなのだが、単調に見える。

 何もないと言うのは、自分の日常を満たしてくれる機能が欠けていることも指している。

 山と自分との関わりが、ハイキングだとすれば、機能としては「歩く」ことぐらいだろう。山の中の小道を通ることが最大の目的になる。

 日常、取り囲まれている様々な機能を削ぎ落とすことで、素朴な状態に一瞬戻るのは悪くはない。

 これは肉体的にも精神的にも、良い切り替えだろう。同じ歩くにしても、地下鉄の階段を上り下りするのとは感じも違ってくる。

 普段は歩くことを味わうようなことは、余程散歩の達人でもない限り無理だし、外出の100パーセントが散歩の人もいない。

 やはり歩くこと以外の目的で動いているためだ。