漠然とした街には漠然とした趣がある。なぜ漠然としているのかというと、街の感じがありふれているからだ。
ありふれた街にはそれなりに普遍性がある。この普遍性は「普通の街」と呼ばれるほど一般的景色をしている。そしてこの景色の形式は、普通に暮らす人達の街に当てはまるのだ。そのため、わかりやすい街になっている。
駅があり、駅前に小さな商店街や、繁華街の続く道があり、その先は住宅地へと続く。住宅地のどこかにちょとした森があり、その下には神社がある。
時代と共に、同じような変貌を遂げた街は、同じ形式を踏んでいる。だから似たような街が多い。
それでもその街が違って見えるのは、街と出会ったタイミングによる。例えば知り合いがいる街と、そうでない街とでは、色合いが違って見える。
個人的色彩に染まった街は、濃い街である。