川崎フォトエッセイ  その45  見知らぬ乗客    ←前 次→  ホーム


 近所では顔見知りの人が多い。話したことはないが、知っている顔である。家も知っている。家族構成もおおよそ分かる。

 電車に乗ると、乗客のほとんどが見知らぬ人々だ。いつも同じ時間、同じ車両に乗り合わせる人なら別だが。

 見知らぬ乗客なのだが、何となく知っている人達である。隣の小学生と似たような子供が乗っていたら、それと重なる。見知ってはいないけど、知り得る人々なのだ。

 類型とも言うべきものがあるため、それほど驚かないで、見知らぬ人々と共に乗り合わせることができるのだろう。

 普通のスーツ姿の乗客なら勤め人だと認識する。本当は洋品店の親父かもしれない。それは聞いてみないと分からないが、聞くタイミングが何処にもない。

 その車両で、何らかの事件でも発生すれば、ドラマのように各々のキャラクタが立ち上がるのだが、そんなことは滅多にない。