川崎フォトエッセイ  その64  結界    ←前 次→  HOME


 喫茶店に入り、任意のテーブルを占領して一服することになるのだが、その空間は、僕のものになる。しかし、レジに立てば、僕の空間もフォーマットされる。

 僕のテーブルから向こう側を見ると、同じような任意の空間が現出している。彼方の空間は伺い知れない人や人達の空間である。

 そこに人が座り込むと、店の人も他の客も、迂闊に入り込めない。空間を仕切っているのは人であることは間違いない。

 複数でも場はできるが、一人客でも場を作るのは可能だ。コーヒー代だけで、結界(笑)が張れるのだから、安いものだ。

 カウンター席でも、テーブルに見えない境界線が引かれる。ほんの数センチでも、侵入して煙草とかがはみ出ると、横目で睨まれそうになる。境界線は微妙で、先に物を置いたほうが勝ちである。

 喫茶店で、向こう側の結界を見ていると、それぞれの場から、湯気のようなものが立ち上っているのがわかる。