平成のこの時代に城を見ても、文字通りの城と対峙しているわけではない。つまりは、「観光の城」なのだ。その意味で城としての本来の機能は終わっている。
それでも、天守閣までの城内を歩いていると、武士になったような気分になる。
市役所の屋上から街を見下ろす風景と、天守閣からのそれは、ほぼ同じだが、趣やニュアンスが少し違う。この違いは、見ようとしているポイントの違いだ。
僕らが市役所へ行くときは、何らかの用事をもって出かける。ところが城の場合、観光が多い。市役所=現実世界だが、城はもう少し現実から離れられる。むしろふだんの生活とは違う刺激を求めて城へ行くのだ。
確かに城も観光の城としての現実性を抱えている。コンクリートの天守閣であり、石垣も排水パイプとかが見えていたりする。
それでも、今とは違う別の権力者がここに存在していたという歴史的事実で、視線を遠くに置くため、見晴らしがいいのだ。