川崎フォトエッセイ  その91      ←前 次→  HOME


 平成のこの時代に城を見ても、文字通りの城と対峙しているわけではない。つまりは、「観光の城」なのだ。その意味で城としての本来の機能は終わっている。

 それでも、天守閣までの城内を歩いていると、武士になったような気分になる。

 市役所の屋上から街を見下ろす風景と、天守閣からのそれは、ほぼ同じだが、趣やニュアンスが少し違う。この違いは、見ようとしているポイントの違いだ。

 僕らが市役所へ行くときは、何らかの用事をもって出かける。ところが城の場合、観光が多い。市役所=現実世界だが、城はもう少し現実から離れられる。むしろふだんの生活とは違う刺激を求めて城へ行くのだ。

 確かに城も観光の城としての現実性を抱えている。コンクリートの天守閣であり、石垣も排水パイプとかが見えていたりする。

 それでも、今とは違う別の権力者がここに存在していたという歴史的事実で、視線を遠くに置くため、見晴らしがいいのだ。