川崎フォトエッセイ  その102  レトルビル    ←前 次→  HOME


 古いビルを見ていると、デコレーションケーキを連想してしまう。つまり、ごちゃごちゃと飾ったあの感じだ。

 この種のビルが取り壊され、同じ敷地に新しく建つとき、ガラス窓の多いすっきりとしたビルになってしまう。まあ、そのほうが絵とかで書くとき、定規を当てやすいので書きやすいが、書く面白味に欠ける。

 ビルは、絵の素材ではないので、絵になるような建て方をしているわけではない。絵になるかならないかは、そのあとの話である。

 機能的なものは、もうその機能一点張りで、他の妄想を介入させる隙間がない。遊びがないのだ。

 すっきりとしたものが多いと。ごちゃごちゃしたものが欲しくなる。そしてその逆もある。

 機能美は存在するが、それはあくまでも「美」である。「美」にもならないような雑多な凹凸は外される。洗練されたものは冷たい。