川崎フォトエッセイ  その104  風呂    ←前 次→  HOME


 町内のお風呂屋さんは常連客が多い。最近では風呂のない家は少なくなったので、利用者も減っている。

 僕の家には風呂がない。従って風呂屋へ行く。誰もいないときもあり、内風呂気分で浸かったりする。もちろん風呂掃除の必要はない。

 常連客の多くは、時間帯や湯船に浸かる位置、座る位置が決まっている。先客がいる場合は、第二候補の位置を使う。

 たまに通りすがりの人も入ってくる。そのときは常連客のポジションが犯される。別のテリトリーを荒らされて怒るわけではない。指定席ではないため、その権利はないのだ。

 いつもの時間帯にいつもの常連客と風呂に入っている図は、非常に安定している。毎日上演されている芝居を観るようなものだ。

 その立ち振る舞いを見ながら、僕も見られていることに気づいたりする。

 着替えする箱や、下駄箱もだいたい「仮想指定席」となっていて、常連客通しはかち合うことは少ない。見事な棲み分けである。