川崎フォトエッセイ  その117  夢の中の街    ←前 次→  HOME


 夢の中でよく出てくる街がある。夢の中でしか行けない街である。夢の中で「ああ、また来ている」と、不思議な気持ちになるが、それほど怖くはない。何となく懐かしく思えるし、また、昔から知っている街として受け取ってしまうためか、意外と違和感はないのだ。

 しかし、それは何処に記憶されているのだろうか。実際に見た街が組み合わされて合成されているのか。見た時期が幼すぎて、見たことを忘れているのか。

 モデルがはっきりと分かる夢の中の風景もある。その意味で、モデルが分からない街も、モデルを忘れているだけかもしれない。

 しかし、その夢のなかの街は、探索しようとしても、なかなか奧へは進めない。何せ夢のなかの話なので、意識を働かせるにしても、それもまた夢のなかなのである。

 正常な人なら、夢と現実の見境はつく。夢はあくまでも夢であり、現実ではない。だが、夢を見たというのも、一つの現実の話なのである。