川崎フォトエッセイ  その167  実像と虚像    ←前 次→  HOME


 シルエットは、実体に対する影だが、これは虚像とは言いきれない。なぜなら夢や幻ではなく、実際に存在するからだ。

 実体から見れば嘘だが、嘘が嘘として存在している。実体が移動すると、影も移動する。ただ、影は条件を満たしていないと浮かび上がらないので、いつも見られるわけではない。

 実体は立体的だが、その影は平面的だ。しかも、その平面には何も書き込まれていない。情報としてあるのは、実体の輪郭程度だ。人影から、それが誰であるのかを当てるのは、よほど実体の輪郭に特徴がないと不可能だ。

 シルエットの情報量は少ないため、単純でわかりやすくなる。人の持つ個性的なものを人影は削ぎ落としてしまうため、自分の影を見ても、それが誰なのか、自分でも見分けが付かない場合もある。

 物理的にできる影よりも「影響」とか「誰かの影を見る」とかの、精神的な影のほうが始末が悪い。