この世の果てのような景色がある。世は果てていないが、果てたものが放置されている現場には、世紀末的雰囲気が漂う。
日常、よく見かける物体が、哀れな姿で野ざらしにされていると、機能していた頃が嘘のように思えてくる。
物はいずれ壊れるが、その後始末は素早く、余人の目の届きにくいところで、こっそり処理される。もっともそれを仕事にしている人にとっては、普通の業務なのだが。
放置された自動車の中に、投げ込まれているアルミ缶。それは死体に群がる蛆虫のようだ。いずれも元気な頃は、そういう組み合わせもなかったはずだ。如何に物とはいえ、それぞれが持つ、物の尊厳があり、本来なら一線が引かれている。
その一線も、スクラップという使用不可能な物体に化したとき、物にまつわる結界も破壊され、同一の扱いを受ける。
ただ、その残骸が、まだ生きていた頃の面影を残している場合、傷ましく感じてしまうようだ。