川崎フォトエッセイ  その176  赤煉瓦    ←前 次→  HOME


 赤煉瓦の塀も、年月を経ると苔が生え、緑色が加わる。この配色は見事なものである。確かに真新しい赤煉瓦も見事だが、問題はそのあとの展開である。なぜなら建造物が新しいのは、ほんの僅かな期間で、本当の勝負は、古くなってからだ。

 板塀や壁ならペンキを塗れば、元気を取り戻すが、煉瓦や石は、素材そのものが素敵なので、上塗りしないほうがいい。そして雨や風のなすがままに身をゆだね、その場所の風土と馴染んでいくことで、素材の味が引き出される。

「古くなるのが楽しみだ」と言えるような建物が、最近少なくなった。レトロブームはその反動で、実際には、古い物は取り壊される運命にある。まあ、邪魔にならない「古いもの」は、レトロ物件として残るだろうが……

 そういえば僕も、重くて大きい鉄の塊のようなカメラは、最近使っていない。コレクションとしては面白いが、実際に使うとなると今の時代とは違和感がありすぎて、妙に目立つためだ。