撮されている人は、当然写真となって顔が見えるが、撮している人たちは顔が見えない。あたりまえの話だが、一方的にカメラを向けられ、パシパシやられると、打ち返したくなる。
そこで、ある記者会見で「逆写」を試みた。さすがにファインダーを見ながら撮すと、カメラで僕の顔が隠れてしまうので、腹の位置からノーファインダーで打ち返した。
撮している人を撮したいのは、カメラやペンの向こう側に隠れている記者さん達の日常をものにしたかったからだ。
僕も通りがかりの人を、こっそり写すことがある。非常に失礼なことだと思っている。だから遠慮がある。気付かれないように写すのは、普段のままの姿を切り取りたいからだ。構えられると困るのだ。
カメラを構えている人は、撮されることに対する構えが疎かになる。僕は写されることに対して構えながら、カメラを構える人たちを逆写した。切り取ったのは記者さん達の仕事風景だった。