川崎フォトエッセイ  その210  鎮守の森    ←前 →次  HOME

 子供の頃、遊びに行った近所の神社は、今も余り変化していない。神木の大木も、数十年前と同じだ。木が大きすぎて、成長した箇所が見えないためだろう。

 神社周辺は昔の面影はほとんどなくなっている。古い農家は取り壊され、今風な新建材の家になっている。さすがに神社は、その波に呑まれず、改装しても外見は同じだ。

 この神社の境内は、子供時代にはものすごく広く感じた。小さな森があり、そこに入り込むと、まるでジャングルのようだったが、今見ると、五分の一ぐらいに縮小されている。実際の面積は変わっていないのだが、そう感じるのだ。高かったはずの木も、低く見える。

 神社の裏は歩けないほど下草が生えていた。強引に踏むと、枯れ葉のクッションが足の裏に伝わる。上を見ると、巨木が空を覆っている。そこから雨のように枯れ葉が降り、沼のように貯まるのだ。そのため、泥沼に足を入れた感触に近いものがある。この感触は、昔と少しも変わっていない。