川崎フォトエッセイ  その305  欠けた強度    ←前 →次  HOME

 さして興味のないもの、興味度の低いものにカメラを向けて写すことがある。写真としての美味しさは自分にとっては低いのだが、何かそこにありそうな匂いがするので写してしまう。

 あとでそれを分析する。その写真をよく見ると、ドブにかかっているコンクリートの橋が黒ずんでいた。日常から少しだけはずれた黒さだ。その黒さは、写真的な黒さで、この黒を見せたいと思ったのか。<P>  しかしカメラの露出計は中央部重点測光。黒い箇所が中央にあるため、黒が灰色になる。上がってきた写真には黒はない。

 黒の魅力を欠いてしまったその写真は、もう興味の薄いものになっている。それでもなお、写真としての強度を保っている。その場合、黒はもう問題ではなくなり、別のものに、何かが潜んでいるのだ。

 魅力や興味のポイントが欠けることによって、違う写真を発見しようとしている。これは、写真を見ながら、目で写真を写すようなものだ。