川崎フォトエッセイ  その317  灰色の味    ←前 →次  HOME

 デティールを感じるのは白と黒の間、つまり灰色のタッチにおいてである。なぜなら、白は一つしかなく、黒も一つしかないからだ。別の言い方をすれば、白は明るすぎて、白紙と同じで、何も書かれていない。黒は黒すぎて、書き込まれ過ぎたかのように、塗りつぶされており、これも、また何も見えないのである。

 灰色になると、その度合いは無限に近い階調で広がっている。当然人間の目では認識できない。このあたりが一番のアナログ世界で、灰色(グレー)の乗せ方で、白黒写真の雰囲気は変わってしまうほどだ。

 写真は目で味わうものだが、灰色のタッチは、まるで舌で味わうかのような味覚性がある。甘いとか辛いとかも、灰色の濃さで、ある程度出してしまえるのだ。

 しかし、普通は、そんな感じで写真を見ているわけではなく、何が写っているのかが、メインになるのだが……。