物事を抽象化しすぎると、勝手な使い方をしてしまう。それは使い勝手が良いため身軽に振る舞えるからだ。
抽象化すると肉がなくなるため、肉というか「具」の持つ引力から解放されて、飛び立てる。
しかし、その「抽象」が、何を抽象化したものかがわからなくなってしまうと、地に足が着かないような浮遊感に襲われる。これは一種の快感でもあるが、何かを隠しているという後ろめたさもある。
抽象化されたものだけで遊ぶのは、現実から離れた世界で暮らしているようなものだ。
その「抽象」が、どこから取り出されたものなのかを、説明的に入れると、抽象化がゆるむ。
元になった現実や現象は難解ではない。抽象化すると難解になるのは、現実のどこに着地していいのかわかりにくいからだ。抽象であるため、その気になればどこにでも着地できることも、抽象化の罪なところだ。