川崎フォトエッセイ  その435 落書きの姿勢       HOME

 落書きをするように絵が書けたら、その人は天才である。タッチが同じでも、書く姿勢が違うため、そのタッチで絵を描き続けるには、思いきった決心が必要なのである。

 むしろ、決心しないで書いた絵は、落書きに近い。これはラフスケッチなどでも言える。下書きで書いた線に勝る清書の線は少ない。これも姿勢が違うためだ。

 落書きは、あらゆる所に可能であるが、清書は規定の用紙が必要になる。漫画を石の上に書いても、それは印刷できない。改めて紙の上に書こうとすると、もう落書きを試みた姿勢と違ってしまい、書く側も面白味に欠ける。

 書いてはいけない場所で書くことが、落書きの面白さである。これは絵だけではなく文字や言葉も同じだ。面白い悪戯書きや冗談が書ける人でも、いざ原稿用紙を前にすると、何も書けなかったりする。いずれも姿勢が違うためだ。