川崎フォトエッセイ  その465 のれん       HOME

 出入り口にあるのれんは微妙な働きをしている。

 入り口を完全に覆い隠したのでは、出入りの邪魔になる。「のれんに腕押し」と言われるように、特別なことをしなくても、普通に通れば物理的な抵抗はほとんどない。切れ込みがあるため、開ける必要はないが、頭部に直接触れるため、手でかき分けることもある。

 のれんはどちらかというと、目隠しの役目のほうが大きい。しかし全く内側を見せなくするわけではなく、人の顔がお互いに見えないように隠す程度だ。

 入り口が閉まっている状態でものれんは掛かっている。冷暖房とかの都合で、開け放てないのだろう。のれんが出ておれば一応営業中だと言うことの表示にもなる。

 人は、お互いの顔さえ見えなければ、面と向かうことがないため、顔から下が見えていても、あまりに気ならないようだ。顔を見られることは、身体を見られることよりも、意味はずっと大きい。