川崎フォトエッセイ  その504  意地悪      HOME

 何も置けないような場所がある。既にその場所は完成されていて、何かを置き、付け加えるとバランスが狂ってしまいそうだからだ。

 背景がメイン風景のようになっている場所には、置きにくい。景観にゆとりがないためか、他のものを拒否するような雰囲気のある場所だ。

 逆に背景を選ぶものもある。ある背景の中に、それを置くのは汚れのように思える場合だ。いずれも単なる物と物とが織りなす意味作用なのだが、人はその意味の中で暮らしているため、どうしようもない齟齬が発生する。

 誰でも入れるような場所でも、暗黙裏の約束事があったり、建前があったりする。ある種の省略が常識になっている場所でも、あえて建前を問うてこられることもある。

 人の持つこの意味作用は、意地悪な面が多い。