川崎フォトエッセイ  その511  鉢と土      HOME

 地面はあっても、舗装されていると、その上では草花は植えられない。元々は自然の草花が占領していた土地だったのに、いつの間にか自動車道路になってしまった。しかもあまりクルマが通らない裏道までもだ。

 鉢植えは、なくなった土を、もう一度取り戻し、アスファルトやコンクリートの上に乗っけることだ。なぜか開発前の風土のほうが良かったのではないかというような痛みを感じる。

 機械的に作られたものばかりに接していると、手作りのものに触れたくなるのと似ている。ある機能を選択すると、選択しなかった世界が消えてしまう。それを復活、再現させたくなるのは、自然なことかもしれない。

 鉢植えの鉢そのものが、アスファルトなどと同じような階層に属する合成樹脂だったりする。その中に入っているのは土ではないかもしれない。だが、植えられているのが造花でないだけ、まだましだ。