川崎フォトエッセイ  その525  移動      HOME

 地下鉄だけを乗りに行く人は希だ。地下鉄で仕事をしている人か、地下鉄が好きな人だろう。鉄道マニアの中でも、地下鉄が好きな人は、さらに希だろう。

 地下鉄に乗り、任意の駅へ向かうのだが、その駅がその人の最終目的地ではない。駅の近くに目的地があるか、そこからまた乗り換えたり、別の交通機関で更なる目的地まで向かうのだろう。

 その意味で地下鉄内での人々は、特に何かをしているわけではなく、単に移動しているだけの状況なのだ。これは、同じ目的を持った人々だと言える。

 目的は単純なほど普遍性があり、わかりやすく、しかも他の人と重なり合える。だが、浅い重なりで、その程度の共通目的など、あまり意味はない。

 移動は中断されたり、思わぬアクシデントにあったときに、やっと意識的になる。移動は大した目的ではないが、アクシデントで移動が妨げられたりすると、当面の目的になる。