川崎フォトエッセイ  その581  渡る感情      HOME

 今を生きている人にとって、今の暮らしとは趣の違う場所に対しては違和感を持つものだが、それが古くからあるものの場合、記憶の断片が何処かにあるのか、妙に落ち着くことがある。

 その記憶は本人ではなく、親や先祖が見てきたものが受け継がれているのかもしれない。この場合、その種の映像情報ではなく、文化的な体質だろうか。

 経験したことのない風景でも、懐かしさを感じることがある。その人が懐かしい感情になる一定のルールでもあるのか、ある条件が重なると、その感情が誘発されるのだろうか。

 友人知人の趣味趣向さえも、あたかも自分のもののように感情移入することもできる。自分の情緒方面を先取りした他者との交流は、過程を省略して、気持ちだけはそこへ渡れるようだ。

 気持ちは見境なく飛び散るだけに、押さえが必要なのかもしれない。