川崎フォトエッセイ  その619  人の気配      HOME

 町で暮らしていると、常に人の気配がある。気にとめなくてもかまわない気配もあれば、気を使ってしまう気配もある。

 もし、その町に誰もいなくなったとすれば、必ず人の気配を恋しく思うはずだ。その場合の「人」は、全く関係のない人でもかまわない。つまり、人一般の存在である。

 よく見かけるような風貌の人、つまり普通に暮らしている人がいる場所は、人が暮らせる場所、人が出入りできる場所なので、それを見ている僕もそこへ行けると判断する。実際には行く機会も、通る機会がなかっても、その気になれば、その場所に立てるとすれば、それは普通の場所がそこにあることになる。

 普通の場所とは平凡な場所で、用事でもなければ行くことはないはずだ。また、以上のようなことを考えて、それが原因で行くようなことは、逆に日常的ではない。

 不特定多数の人々の気配があると、人が人として抽象化される感じとなり、ニュートラルな気持ちになれる。