川崎フォトエッセイ  その628  ある展望      HOME

 見知らぬ山から見知らぬ街を見下ろすと、現実が風景的に見える。馴染みがない場所は、まだ何も書き込まれていないため、そこに刻まれている思い出や思惑がない。新(さら)の景色として見てしまうためだろうか。

 地図とかで地名は知っていても、漠然とした位置関係でしか把握していない。また、何度もその街を通過していたとしても、印象は希薄である。

 街との関わりは、人や用事と絡むことで発生しやすい。関係のない街が関係することになるが、街は背景のままで、メインの意味になることは少ない。

 街は場であり、その場で何をしたのかが記憶として残りやすい。さらに、そこでしたことが、その人の人生を変えたり、影響を及ぼしたりするとなると、地名印象と生き方が重なることになる。

 ある風景を一人で見るのと、他の誰かと見るのとでも違ってくる。風景の横に物語も隠されている。