川崎フォトエッセイ  その631  街の遺物      HOME

 過去の遺物と隣り合わせとなっている姿は珍しいことではない。と、言うより、今は過去の寄せ集めである。

 もう既に使われていない過去を遺物、遺跡と呼ぶ。そこには人が本来の目的で使用していない場所だ。この種の場所は至る所にある。

 少し前の過去は、現在との繋がりをまだ維持している。「以前、誰それさんの家だった」とかだ。

 現在と過去を繋げているのは人の記憶で、それが絶えると、過去の暗闇の中に消えていく。

 見知らぬ街での散歩中、遺物のほうが目立つのは、一昔前の階層を垣間見るためだろうか。街の特徴は、過去の面影から推測するほうが楽しいためだろうか。

 遺物と今風な建物との対比でリアルな今を感じる。そして今風なものも、いずれ過去の遺物に組み入れられてしまう運命にある。