川崎フォトエッセイ  その708  緩い記憶       HOME

 忘れていた過去がある。特に重要なことではなく、そのことが尾を引いているわけでもなく、印象に残っているわけではないような過去のイメージがある。

 あまり拘りを抱くこともなく、すっと通り過ぎた過去があり、思い出のインデックスにも残っていないのだが、何かの機会で「そんなこともあったなあ」と、思い出すことがある。

 その種の過去は、無傷のまま温存されているようで、今との関わりを絶ち、浮島のように、ぽつんとイメージだけが浮いている感じである。

 僕らは全ての過去を思い出すことはできない。常に今を基点に過去を見ているため、必要な情報として引き出す機会がないからだ。

 目的もなく、ぼんやりと散策していると、この種の過去と接触するようだ。散歩しているその今が、たまたま頭が緩くなっているためだろうか。