川崎フォトエッセイ  その800  遺骨       HOME

 本来の機能を失い、使えなくなったものでも、この世から消えてしまうわけではない。消えたのは機能価値で、そこから先は別のものとなる。つまり、本来とは違う使われ方、再利用だ。

 だが、完全に放置され、再利用する価値はあっても、それを見出す人がいないと、意味も価値もない物体となる。それは人間にとっての価値観で、自然の中に放置されると、自然の摂理の中に組み込まれる。その場合、価値とか意味とかは、自然な与えられ方をする。

 人が死ぬと、肉体的には骨が残る。物理的な意味での骨は単なる物体で、そこから生者のイメージを紡ぎ出しにくい。生者だったが、物体になったことで、すっきりとする感じもある。

 その物体が機能を果たしていた頃は、様々な問題を抱えていたが、機能を失えば、その期待も消える。