川崎フォトエッセイ  その806  ある景観       HOME

 忘れてしまったような光景が、町中にはまだ残っている。

 時代とともに町は変化する。新しい建物は昔のような形をしていない。町は新しいものが好きなのではなく、そういう形でしか作れないためだろう。

 景観のメインが変わっても、それ以前にメインだった景観も残っている。それを背景とし、その前を行き交う人を見ていると、時代の変貌などなかったような感じになる。

 ある人が、ある建物に移り住んだからといって、その人が変わるわけではない。多少、暮らし向きは変わるかもしれないが、極端な段差や、質的な変化があるとは思えない。

 居住空間の本質や人間の本質はさほど変わらない。装備や装いは、今の時代を生きるための方便だ。あえてこだわらなければ、手頃なもので間に合わせるだろう。それが現代を被ることになる…などとは考えずに。