川崎フォトエッセイ  その818  野       HOME

 草花は動くための足や羽根を持たないが、静止したままの生物ではない。そうでないと、単なる造花になる。

 造花のほとんどは、その植物の一番良い時期を凍結させたもので、一番華やかな時期で固定させている。

 自然界の中で咲く草花は、何処で根を張り花咲かせるのかは、成り行きで決まる。ある条件を満たしておれば、意外なところでも育つ。

 自然の振る舞いであるとは言え、ある決まったプログラムの実行で、自動的な側面もある。

 たとえば、今までコンクリートで覆っていた場所でも、何らかの事情で、その皮がはがされ、地肌が出たとき、どこからともなく草花がやってくる。

 油断も隙もあったものではない。と、人は考えてしまう。人工物でも放置していると、いつの間にか「野的」なもので覆われてしまう。

 自然に帰るというわけだ。