川崎フォトエッセイ  その889  崩れ       HOME

 多少なりとも崩れた状態は、不思議と自然な感じがする。人工物の多くは、できあがった状態が完成品で、後は劣化する一方となる。

 だが、木造建築の中には築後数百年後の状態を見込んだものもあるようだ。建物の重さで、形が変化するらしく、年月を経た後に、予想通りの形に仕上がっているという案配だ。

 人工物は自然の中にさらされると変化する。それを見込んで作るよりも、建て替えてしまうほうが多い。

 しかし、せっかく自然界の影響を受け、風土の中に溶け込んでいるような建物を壊すのはもったいない。

 雨風で劣化し、崩れが生じた状態は、建物であっても、まるで生き物のように思えることもある。同じ年代を、共に生きてきた人と建物、という感覚があるためかもしれない。

 人の身体も年老いてくると、真っ新な状態ではない。