川崎フォトエッセイ  その931  手間仕事       HOME

 道が土の場合、その土を積み重ねて塀にするのは分かりやすい。敷地の境界線の土を掘れば、土塀は簡単に出来るかもしれないが、前の道がたとえ私有地でも、公共性の高い通路なら、それも出来ないかもしれない。

 瓦屋根が痛んだりすると、屋根を葺き替える。あとは捨てるだけのいらなくなった瓦を利用して塀を造ることも出来る。確かに巧い利用方法だが、既にある塀を潰してまで造り直せない。

 その建物の周辺にある素材を使うほうが、景観としては馴染みやすい。

 古い町並みが貴重だと思うのは、人の知恵が働いていることだ。そして手間を惜しまないで、造られている。今の時代は、人件費が高いようで、高価な材料を使わなくても、造るのに日数がかかりすぎると、凄い工事費になるかもしれない。

 すると、昔は、時間がゆるりと流れていたのだろうか? 忙しい人は今も昔も忙しかったと思うし、また、やらなければいけない用事は、今と同じぐらい多かったように思える。

 恐ろしく手間暇のかかる仕事を平気でしている人は、その仕事が好きだと言う他に、適当な理由が思いつかない。または、他に適当な仕事がないのかもしれない。