川崎フォトエッセイ  その943  銀杏       HOME

 木の葉は花ではないが、花のように見えることがある。それは単に色の問題かもしれない。

 花が咲くのは盛んなときだが、葉の色が変わるのは、落葉前だ。夕日が沈む瞬間と似ており、最後の見せ場を作っている。

 花は貴重だが、木の葉は、それほどとは思わないのは、ものが多いためだろう。木の種類によっては一年中見ることが出来る。

 そのいつも見慣れている葉が、ある日、色づき始め、花と間違えるほど、鮮やかな色彩を放つから、驚くのだ。

 自然の織りなす、この豊かな変化や、映像は、人が書けるものではない。所詮絵は二次元の世界で、奥行きや空間がない。これは写真や動画でも同じことだ。

 そこに居合わせないと見ることが出来ないものが、やはり最高にリアリティーがあり、これに勝るものはない。

 人は、凄い風景を見たとき、言葉では考えないと思う。言葉が機能するのは、その後で、意味を紡ぎ出すのも、そのあとの作業だ。

 凄いものを見たとき言葉が出ないのではなく、出す必要はないのだ。言葉は伝えるためにある。それは自分や他人に向かって…。