川崎フォトエッセイ  その962  高波       HOME

 建物が取り壊されて更地になった場所もあれば、元々田畑だった領域に建物が建っているだけのこともある。

 隣の田圃にビルディングが建つなど、かなり急激な現場だ。ビルの谷間で田植えをしている図は考えたくはない。高層ビルの高波がすぐそこに迫っているのに、田園風景的行為はしにくい。

 残虐な行為は、そこにはっきりとした繋がりがない場合には、罪悪感はない。

 マンションやオフィスビルのすぐ横に田畑があったとしても、その人の責任ではない。住まいや仕事先という日常の中にある。特別妙なことをしているわけではない。

 農地所有者との繋がりがないからだ。また、農地を売った人も、きわめて当然な時勢に乗っているだけだ。

 そこに妙な気配を感じるのは、そこに関わっていない傍観者かもしれない。つまり第三者だ。そして、それは単なる感傷にしか過ぎない。その鑑賞者自身も、似たようなことをしているはずである。