川崎フォトエッセイ  その993  行燈       HOME

 表示用の装置はあるが、もう何も情報を発していないことがある。何も伝えるものがないのに、伝える装置だけが残っている。

 伝える装置だけでも、何かを伝えてしまう。それは何も表示していないという表示ではなく、何かを表示していた痕跡を伝える。

 その装置にはジャンルがあり、取り付けられた位置や周囲の状態で、大よそのことは分かる。

 伝えようとしているものと、その装置は似たジャンルのもので、さらに、その装置が置かれている場所も、繋がりがあるはずだ。

「無地」は聞いたことはあるが「無字」は聞いたことはない。「無字」はわざわざ言う必要がない。

 無地の看板は結構見かけることがある。空いているテナントとかだ。新しい店が入ると何かが書き込まれるだろう。それまでは単なる行燈の役目を果たす。

 行灯が先にあり、そこに文字や記号や模様を書き込むのは、あとからかもしれない。

 

 

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