川崎フォトエッセイ  その995  ある闇       HOME

 真夏の日中は深海のように静かに感じることがある。

 深海は海の中の闇の個所だ。深いため光が射さない。

 光が強いほど日陰がより暗く感じられる。真夏の陽射しの強さが闇をさらに強くする。

 その闇は街中では建物の中だろう。見知らぬ場所だと、どんな人が住んでいるのか分からないし、当然内部も分からない。

 暗くて見えないことが分からないことに繋がり、闇の神秘がいっそう高まる。

 分からない所を歩くのはスリリングだ。別に治安が悪いためではなく、知らないことが刺激的なのだ。

 外からは闇のように暗くても、中に入れば困るほどの暗さではない。外が明るすぎるだけである。

 闇が解け、内部の様子が見えてくる。そこは怖がるような闇の世界ではなく、中に居る人にとっては一番安全な場所でもある。

 見知らぬ屋内に入り込んで来た人こそ、内部の人にとっては、闇が飛び込んできたように感じるだろう。

 

 

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