川崎フォトエッセイ  その1028  鎮魂       HOME

 野仏は、屋外にさらされているため、風雪の中にある。石が風化するように、野仏も風化する。

 しかし、風化のスピードは穏やかで仏像の顔形が分からなくなるには、大変な年月がかかるだろう。

 野仏の作者は仏師であるとは限らない。ちょっと器用な村人や、石屋が彫ることが出来る。それが仏像の形に見える程度でよいのだ。

 それが仏像の形をしている限り、社会通念に沿った扱いを受ける。多くの場合、粗末に扱うことは許されない。

 何のために置かれているのかさえ分からなくなった場合でも、仏像であることに変わりはないためだ。

 何らかの鎮魂のための野仏は、それを取り払うと、鎮魂されているはずの何かが妙な動きをしかねない。

 もし、鎮魂対象が人である場合、この文化を共有していれば、鎮魂対象になっていることが分かるだろう。

 魂が不滅かどうかというよりも、鎮魂する気持ちが大事だ。