川崎フォトエッセイ  その1056  異空間       HOME

 無機的な場所でも、絵があると、風景が和らぐことがある。確かに殺風景な絵では、さらに殺伐としてしまうが、絵は現実にはないものなので、その絵の面だけは異空間が占めていることになる。

 異空間は現実の空間とは異なり、現実での束縛とかから、ほんの少しだけ逃れられる。

 現実の水平上でしか人は生きてはいけないが、別な水平を見たくなることもある。その異空間の強度が低いと、現実の上に淡く張り付いているだけで、現実上での影響力はさほどない。

 現実と異空間とが、混ざり合うことはなく、現実の上でしか異空間は存在しないように思える。なぜなら、それを見ている側が、現実側にいるためで、異空間に立脚するという次元は、寝床で夢を見ているときの意識に近く、そこでは自身の肉体に影響する程度だ。

 異空間からの誘いは、そこに入れないだけに、現実上に持ち込むことになる。しかし、貼り付けられたものはやがて色褪せる。現実のルールの上で存在するためだ。