川崎フォトエッセイ  その1094  古い光       HOME

 もう目立っても仕方のない物件もある。その光が放たれたのは数十年前で、今の時代にその光が届いていても、視線がいかないかもしれない。

 しかし、世の中の多くはその種の光で満ち満ちている。なぜなら、新しく放たれた光も、翌日には古くなるからだ。

 いっそのこと、最初から古びた光を発する方が、ギャップが少ないかもしれない。

 漬け物には、浅漬けもあれば、古漬けもある。古漬けを好む人もいる。しかし、長く漬け置いたほうが価値が高くなる場合と、ある期限を越えると、古漬けではなく、単に腐っているだけになってしまこともある。

 時代のセンスもそうだ。十年前と今とではセンスは異なって当然だ。今のセンスが、焼き直しであったとしても、時代がそれに叶うのなら、役立つだろう。

 しかし、どう見ても復活しそうにもない古い光は、朽ち果てるしかない。