川崎フォトエッセイ  その6  玄関    ←前 次→    ホーム


 路地にはドアより、硝子格子の玄関のほうがよく似合う。夏になれば、玄関も開け放たれ、簾がおろされる。ガラガラ式の玄関は、左右どちらからでも開くので便利だ。それに簡単に取り外せる。

 硝子格子は、何枚もの硝子がはめられている。ボール遊びの子供に硝子を割られても、被害は一枚だけですむ。全部取り替えなくてもいいのだ。

 硝子はヒビ程度、もしくは形が残っていたら、紙で補修できる。ご飯粒を糊にして貼ることもできる。

 丸い紙が貼られている玄関など、最近は発見するのは難しい。それは継ぎ当てズボンの子供を見かけなくなったのと、時を同時にしている。

 水ばなを垂らしながら、路地裏で鬼ごっこや隠れん坊をする光景は、ますます見かけなくなった。

 昔あったものが今はない……。その欠落箇所は、何かに置き換えられているはずだが、観察者の目には入らない。