川崎フォトエッセイ  その13      ←前 次→  ホーム


 光と影が織りなす悪戯は、妙な雰囲気を作り出すものだ。影の形は、自然とあぶり出されたものだけに、創意工夫の痕跡が見つからない。それだけに素直に見ることが出来る。

 要するに、人が作ったものは臭いのだ。そこに何らかの狙いや企みや、配慮や主張や、センスやポリシーとか、諸々の「臭きもの」が入り込むためで、作者との相性が合わないと、不快なものになる。

 恥ずかしい話だが、僕は絵画を見る鑑賞眼はゼロに等しい。それは絵は不自然なので、その「捻り方」に翻弄されるためだ。

 夕焼け雲を見ているほうが、絵を見ているよりも心が和む。市場に射し込む西日の魔術を見ているほうが、捻った絵画よりも心を動かす。

 要するに絵画などなくても、日常風景の至る所に無料で鑑賞できる絵画が転がっているので、絵も写真も僕には必要ではないのだ。

 そんな気持ちで絵を描き、写真を写していると、現実の凄さが伝わらないことにいらだつことになる。