川崎フォトエッセイ  その38  理容店    ←前 次→  ホーム


 いつもの日常風景とは違う場所、例えば旅先の街角を歩いていると、同じものが違って見える。意味としてはよく知っているのだが、雰囲気的に違う。

 自分が住む町には、もうなくなってしまったような建物を発見すると、まるで過去へワープしたような気持ちになる。

 小学生時代の友達が、そのままの姿で、理容店の椅子に腰掛け、既に亡くなられたはずのお爺さんが旧式バリカンを手にしている。そんな絵がフーと浮かぶ。

 なぜ旅先の街に、僕の旧町内が蘇るのか? それは、全く知らない旅先の街なので、強引な妄想が出来るのかもしれない。下手に知っている街だと、街の事情が分かっているだけに、妄想も全開できない。

 違うはずの場所で、こちらと同じようなものを見た場合、その同じさは、必要以上に親しみ深く感じられる。違っていないという安堵感があるためだ。