川崎フォトエッセイ  その39  開け放つ    ←前 次→  ホーム


 僕の部屋にはクーラーがある。しかしよほど暑い日でない限りつけない。そのかわり玄関を開け放している。そこから吹き込んでくる風で、真夏をしのいでいる。

 玄関を開けていると、外界とイケイケになるため、予期せぬ人が入り込む可能性がある。 しかし近所の人は、声がかけやすいらしく、玄関先から奧にいる僕に話しかけてくる。回覧板なども手渡しで受け取れる。

 さらに集金人も、在宅かどうか確認しなくてもいいので、楽なようだ。

 その近所で遊んでいる幼児は、中を覗くが、入ってこようとはしない。やはり知らない部屋へ入るのが怖いのだ。

 玄関を開けていると、覗かれることになるのだが、逆にこちらも覗き返せる。

 ドアをロックし、誰も近寄れない密室の生活には、まだ僕は慣れない。内と外とが、暗黙の了解で、あいまいに区分けされていた時代が懐かしい。