川崎フォトエッセイ  その40  和風オフィス    ←前 次→  ホーム


 昔の商家を発見した。それほど古い時代ではない。看板が残っていて、その文字を見ると、銀行関係の建物だった。

 しかし、この余裕は何だろう。まあ、その時代、周囲も余裕のある建物が並んでいたはずなので、違和感もなかったはずだが、今では余裕を通り越している。

 この種の日本家屋オフィスなど、今では作れない。あまりにも贅沢すぎるからだ。それは、一般家庭でガスコンロを使わず、炭火で煮炊きをするようなものだ。

 この忙しい時代、能率や機能アップは至上命令である。その軽快さは確かに素晴らしく、もう、後ろには戻れない。

 だが、ある時代でストップした建物を偶然見てしまうと、妙な感情が流れ込む。いわゆるカルチャーショックである。同じ国、同じ文化を背負っていても、時間軸で切り取られると、このショックを感じてしまうのだ。

 そしてその贅沢さを、ただただ羨むだけだ。