川崎フォトエッセイ  その49      ←前 次→  ホーム


 子供の頃は、枕など使わなかったように思う。寝相が悪かったためか、頭を枕の上に乗せて寝続けることが不可能だったのだ。 自分の枕を与えられたとき、大人になったような気がした。

「これでやっと枕を高くして眠れる」などの言い方を、真に受けると、高い枕をしている人は心配事の少ない人ということになる。

 枕の中身をアンコと呼んでいた。その中に何が入っているかなどは普段考えていない。ところが街で「そばがら入荷しました」の文字を見て、枕のことを思い出してしまった。僕のは確かアンコの半分はそばがらだったような記憶がある。

 伝統のある商店街を歩いてると、忘れてしまったようなものに出くわす。最近はコンビニで買う機会が多いためか、従来からある商店が新鮮に見えたりする。

 そばがらのような、感触的なものを、最近愛おしく思ってしまう。