川崎フォトエッセイ  その71  自販機    ←前 次→  HOME


 機械的なトラブルは、機械に説教しても無駄だ。烏龍茶を飲むため、コインを入れても出てこないときがある。機械は正直なので、間違っているのは僕の方だと思い、もう一度コインを入れる。百円玉だと思っていたコインが五十円玉の可能性もあるのだ。それでも出てこないときは、機械の故障を疑う。

 結局故障していることがわかり、店の人を呼ぶ。しかし、機械は僕が入れたコインを覚えていない。疑わしい眼差しで店の人は僕を観察する。そして渋々レジからお金を取り出し、精算する。僕が何をしたというのだ。

 駅の自販機で切符を買って自動改札を通る時、多少びくびくする。駅員から買い、駅員に切符を見せて改札を通過するときの信頼関係が、機械の場合保てない。いくら馴染みの駅でも、機械は馴染んでくれないのだ。

 機械的チェックを受け続けると、僕まで機械的な動きに同化しそうになる。昔からSF物のネタになってきた機械と人間の関係が、今は日常の物として確実にそこにある。