川崎フォトエッセイ  その72  エスカレータ    ←前 次→  HOME


 エスカレーター初体験はデパートだった。子供だったので、無料で乗れる乗り物としてしか理解していなかった。

 エレベーターの場合、乗り物としての醍醐味が薄い。密室に閉じこめられているためだ。外が見えるタイプでも窮屈だ。

 エスカレーターの場合、その気になれば歩いてもいい。後退は難しいが、全身は普通の階段を上るのと同じだ。この一寸した融通がエスカレーターや動く歩道の良さだろう。

 止まっているエスカレーターに乗るとき、誰もがガクンとタイミング外す。何度それを経験しても、体が覚えてくれない。

 それは最初に飛び乗ったときのショックが強力なためだろう。幼児期、エスカレーターに飛び乗るのは、かなり勇気が必要だったのだ。命がけで飛び乗ったため、そのコツをかたくなに記憶してしまい、止まっていても、タイミングを変えられないのかもしれない。