川崎フォトエッセイ  その107  自転車泥棒    ←前 次→  HOME


 自転車は身体との一体感が強い乗り物である。身体の動きが、ほとんどそのまま自転車に伝わる。犬の赤ちゃんとかが初めて自転車に乗っている人を見たとき、そういう形の生き物だと、錯覚するかもしれない。
 自転車のスピードは、ペダルを踏む人の体力で決まる。そのため、息づかいが微妙にハンドルに伝わったりもする。乗る人によって、同じ自転車でも、違った振る舞いをするわけだ。
 その動力源が、人間の肉体であることで、一体感を強くしている。体調の悪いときは、それなりの走り方をする。それでも歩くよりは速く、歩くことに比べれば、疲労度は少ない。
 安い自転車だと、かなり高い靴と同じ値段で買える。昔のイタリア映画「自転車泥棒」のように、自転車を取られて、仕事が出来なくなったお父さんが、親子で自転車を探すストーリーなど、もう遠い昔の話になった。