川崎フォトエッセイ  その127  抽象ショット    ←前 次→  HOME


 よく見かけるワンショットがある。階段を上り下りしているショットなどがそれだ。一応具体的なアクションはあるのだが、それが目的ではないようなショットで、抽象的なショットなのだ。

 畠でクワを持って耕しているショットは、目的などがよく分かる。それに比べると、地下鉄の階段を上るショットは、その先が分からない。

 抽象画ほどには抽象的ではないにしろ、都会のなかでのワンショットは、やはり抽象的なのだ。それだけに、いろいろな想像ができる。買い物客かもしれないし、近所のオフィスがあるのかもしれないし、不倫へ向かう人かもしれない。

 そのキャラは、意識的に思わせぶりな態度をとっているわけではない。それを観察している僕も、さらにその後ろから観察している人にとっては謎なのだ。

 都会では、この種の「抽象」は、日常的なので、意に介することではないのだ。