最寄りの駅とか、最寄りの銀行とかは、日常圏内にある。家から近いとか、会社から近いとかの事情が反映している。
この場合、選択の余地がない。最初から任意の駅が最寄り駅になるように引っ越して来たのなら別だが……。
最寄りのコンビニや、最寄りの書店や、最寄りの喫茶店も、日常の範囲内に点在しているはずだ。「最寄り」は何となく気楽でいい。普段着のまま行けそうだ。その種の「最寄り」を集めれば、自分の街となる。もちろんその人の領地でもないし、領主でもないが、「我が町」でとして、生活を演出している。
昔のように、血縁や地縁が濃厚だった村落や町屋と違い、出身地も職業もバラバラである。しかし、同じ環境内にいると思うと、それなりに親しみが沸く。つまり共通する「最寄り」を持つためだろうか。
生活に必要な「最寄り」は、その人の暮らし向きによって、地図も違ってくるだろう。「最寄り」なのに、一度も行ったことがない場所もあるはずだ。